あつまろです。

小泉政権時代の「民間でできることは民間に委ねる」という考えや、規制緩和による市場主導型の産業の方がいいと私は考えてきましたし、今もその流れの方がいいと考えています。一方で保護主義や大きな政府を望む声があり、こういう声を聞くたびに既得権益や旧来の考え方とみなしてきました。しかし、ある本を読んでから私の考えはあまりに短絡的であったと頭をガツーンとやられた気がしました。
「チョムスキー氏」
知の逆転」という新書は、吉成真由美氏が学問の常識を逆転させた現代の叡智6人に対するインタビュー書です。どれもが刺激的なのですが、今回私が取り上げるのはチョムスキー氏との対談で出てくる話題の一部です。

「どこまでが民間で、どこまでが政府なのか」
「民間や市場に委ねるのが全て正しいわけではない」。私が気づきを一言で表現するのであれば、なんとも当たり前の話になってしまいます。しかし、市場や民間が主導すべき部分はどこまでで、政府や公共が主導や規制をすべき部分はどこまでか、その役割分担の線引きは大変むずかしいと感じています。

「政府によって主要技術がつくられた」
チョムスキー氏の言葉を要約すると以下のようになります。
コンピュータ、インターネット、飛行機、薬。 これらはもともと税金によって政府のプロジェクトとして開発されたものである。MIT(マサチューセッツ工科大学)はその代表的な機関で、政府による資金供与によってコンピュータが開発されて、民間企業に供与されるまでの数十年間において政府が研究資金を供与した。
アメリカにおける最大の民間輸出品目は民間航空機だが、これは改良された爆撃機である。アメリカのボーイングもヨーロッパのエアバスのいずれも政府の援助を受けており、資本主義とは何なのかということになる。
経済の基盤となったテクノロジーは、政府・公共(国民の税金)で開発されたものである。
たしかにインターネットもコンピュータも軍事技術によるものと聞いていましたが、たしかに現代生活の基盤テクノロジーをあらためて考えてみると政府や公共が担っているのも頷けます。他にもNASAの技術が民間に転用されるケースも数多くあります。

「負の外部性」
市場の致命的な欠点は「負の外部性」である、とチョムスキー氏は説きます。私なりの要約でいきます。
「負の外部性」。たとえば自動車販売店が消費者に車を売る。店側もお客の両方ともが納得するのですが、他の人にコスト(負担)がいくかについて考えていない。その車が交通渋滞が起こったり、大気汚染が起こったりすると、他の人のコスト(負担)になる。一人分はそれほどでなくても、人口全体で考えると大変なコスト(負担)になる。サブプライムローンの問題は、金融システム全体を崩壊させるリスクがあったのだが、市場原理主義では誰もその部分を考慮しない。だから金融危機は起きた。金融部門は唯一市場原理だけで動いている。だから何度も破綻し、そのたびに政府が救済することになっている。

市場に全てを任せると、誰も全体を考えようとしなくなってしまう。だから政府による市場の規制は絶対に不可避である、とチョムスキー氏は言います。すごい説得力で、私が最もインパクトを受けた話です。

「政府は企業を規制すべき、だが・・・」
企業は当事者間だけをみて全体を考えない、だから全体を考える公共部門である政府が規制すべき。これはそう思います。 ただし、日本の規制緩和の流れが間違いということはありません。時代錯誤で現在では意味のない規制は撤廃したり、現在の事情を鑑みてあらためて規制をデザイン(設計)していくべきだと思います。例えば、なぜ規制されているかわからないネット選挙の解禁もやっぱりやるべきだと思います。

さて、チョムスキー氏の考えを聞いて思ったのが「政府が企業を規制する」というのは、現代においては範囲が狭すぎるのではないかと感じました。温暖化などは地球規模の問題であり、核の問題もそう。ある国だけが規制して解決する問題ではありません。グローバルで考えるべき問題であり、実際世界政治でも国連だけでなくいろんなところで各国が話し合いを続けています。しかし、なかなか世界全体や地球のことより、自国の事情を最優先してしまうのが、ここでも表れています。その例が地球温暖化に関する「気候変動枠組条約締約国会議(COP)」ですが、ここでさんざん議論してもなかなか効果的な結論で合意できないのが現状です。

「負の外部性を意識していこう」
世界の人口は70億人から90億人に向かっていきます。これだけの人数をひとつに束ねるのは至難の業でしょう。しかし、今回チョムスキー氏に教えてもらった「負の外部性」を意識して、世界全体で地球規模でという考えを一人ひとりが持っていくことが理想的です。まずは自分自身の日常生活から始めていきます。ひょっとしてイエス・キリストやマザー・テレサみたいな偉人は世界全体を真っ先に考える志向があったのかもしれない、と思ったりしました。

知の逆転 (NHK出版新書 395)

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